第一発行年月日の登録-著作権を登録する意味(4)-

事例3:「第一発行(公表)年月日の登録」

先日、懇意にしている広告代理店A社の依頼を受けて私が描いた広告用のイラストについて、他のイラストレータが「自分の作品を真似している」としてクレームを入れてきました。もちろん、身に覚えのない話です。
 そこで、A社からのオファー、制作期間、公表された日付などを時系列で説明することになりました。そのために依頼主であるA社も巻き込んで、大変な手間を取らせることになってしまいました。結果的に、私が作品を完成させた日、公表された日が、相手方の作品の制作日よりも早かったことが判明して、誤解を解くことができました。
 今回は、依頼主であるA社がしっかりしたところで、契約書をきちんと作成していたことや業務上の記録を残していたこともあって、証明がしやすかったので良かったものの、取引先によってはいい加減なところもあります。
今後、こうしたリスクを回避するには、どのような方法が考えられますか?


→「第一発行(公表)年月日の登録」とは、著作物を最初に発行または公表した日付を登録する制度です。この登録により、反証がない限り、登録年月日にその著作物が最初に発行され、または公表されたことが法律上推定されます。
上記事例のようなリスクの回避を考えるならば、「発行日(または公表日)の証明が有利になる」という点で、「第一発行(公表)年月日の登録」は一つの方法と言えるでしょう。ただし、摸倣(意図的に他者の作品を真似て創作すること)かどうかは、発行日(または、公表日)の早い遅いだけで決まるわけではありません。著作権法では、自他の作品がたまたま似ているだけであれば模倣の問題は生じません。仮に、相手方が制作・公表したとする日付が、自分が登録した「第一発行(公表)年月日」よりも前であれば、他の方法で模倣でないことを明らかにしていくことになります。
なお、「第一発行(公表)年月日の登録」には、著作権の保護期間の起算日を明らかにできるという効果があります。法人や団体名義の著作物の場合、そもそも著作者の「死亡」を観念できないため、これらの著作物については公表後70年を保護期間としているわけです。ただ、これらの著作物の公表日がいつであるかはあやふやになりがちで、その著作物の財産的価値がはっきりしなくなってしまうことがあります。そこで、保護期間の起算日を公表時とする著作物の場合には、「第一発行(公表)年月日の登録」をすることによって、そうした問題に悩まされずに済むようにしておくのです。