著作権の移転の登録-著作権を登録する意味(3)-

事例2:「著作権の譲渡の登録」

当社(X社)は、自社のサイトに掲載するための写真の撮影を写真家Aに依頼しました。当該写真の著作権は、Aから当社へ譲渡されました。きちんと契約書も作成しました。
 あるとき、この写真が不動産会社Y社のパンフレットに使われていることがわかりました。しかしながら、AからもY社からも何の連絡もありません。当然、当社は許諾をしておりません。どうやらAがY社に、かってにこの写真の利用を許諾しているようなのです。この場合、著作権を譲り受けている当社は、Y社に著作権を主張できるのでしょうか?

→「著作権の譲渡の登録」とは、その登録により権利の移転を明らかにするための制度です。「著作権の譲渡の登録」は、その法的効果から「第三者対抗要件としての登録」とも言われます。
著作権が、別々の二人に譲渡された場合、譲受人が二人になってしまいます(これを、「二重譲渡」と言います)。この場合、どちらが著作権を有するのか、争いが生じてしまいます。しかし、「著作権の譲渡の登録」があれば、登録名義人が著作権者として法律上取り扱われることになります。つまり、登録名義人は登録をしていないもう一方の譲受人に「対抗」できるというわけです。ちなみに、契約をどちらが早く締結したかは関係がありません。
さて、上記事例の場合、Y社は著作権を譲り受けているわけではなく、Aから利用許諾を受けているだけです。そのため、正確には「二重譲渡」とはいえません。それでも、ある裁判では「二重譲渡」の場合と同様に扱われています(東京地裁平成16年1月28日判決)。つまり、X社がY社に対抗するためには、「著作権の譲渡の登録」が必要であるとされたのです。これは、X社が先に譲渡を受けているにも関わらず、「著作権の譲渡の登録」がない限り、X社はY社に権利を主張できないということを意味します。
「著作権の譲渡の登録」には、こうしたトラブルを回避し、「取引の安全」を確保するという効果があります。