レオナール・フジタ(藤田嗣治)と著作権

レオナール・フジタ(1886.11.27.―1968.1.29.)の代名詞と言えば、「乳白色の下地」による裸婦です。その人気は衰えることを知らず、今年は没後50年ということもあって、ますます注目されています。フジタは、絵画だけでなく、写真、映像、陶磁器などの創作物も遺しています。当然ですが、それらも立派な著作物です。

フジタの死後、著作権は君代夫人が承継しました。君代夫人はいくつもの裁判を提起したことで知られていますが、それは、戦後にフジタが「戦争協力者」と非難され、半ば追い出されるように日本を後にしたこともあってのことだと言われています。フジタは、1955年、69歳のときにフランス国籍を取得しています。フジタが日本の土を踏むことは二度とありませんでした。

さて、裁判の中には、後々まで影響を与えたものもあります。そのひとつが、「展覧会カタログ事件」(東京地裁平成元年10月6日)です。それまで、日本の美術館では展覧会のカタログ制作を、著作権法第47条の「小冊子」であるとして、無許諾で行っていたそうです。ところが、君代夫人は、販売されているカタログは「小冊子」には当たらないとして提訴、その結果、勝訴しています。これにより、「小冊子」の解釈が明らかにされました。この裁判以降、ほとんどの美術館では、カタログ制作に際して、著作権使用料を支払うようになったといいます。

君代夫人は、2009年に亡くなりました。その後、著作権はフランスの孤児院を運営する財団に寄贈されました。現在は、新たに設立された「フジタ財団」が管理しているようです。ところで、現行著作権法では、著作権の保護期間は著作者の死後50年と定められています。今年は、フジタの没後50年です。よって、著作権の保護期間は、2018年12月31日で満了となります。

いや、満了となるはずでした。

10月31日、TPP11発効に伴い、著作権法が改正されるとのニュースが飛び込んできました。保護期間は延長され、著作者の死後70年になります。施行日は、2018年12月30日。つまり、フジタの著作権満了の1日前です。これにより、フジタの著作権の保護期間は2038年12月31日までとなります。

著作権の保護期間が延長されることの賛否はさまざまです。それでも、フジタの著作権がこれからも保護されることになるのは、何だかほっとするようにも思います。